日本のソフトウェア産業に求められる「価値創造型エンジニア」とは

日本のソフトウェア産業に求められる「価値創造型エンジニア」とは
2025年10月29日

経済産業省が公開した報告書
『日本のソフトウェア産業の未来 ― エンジニアリング領域における価値創造型人材の育成』 は、
今後の日本におけるソフトウェア産業の方向性を示す重要な提言として注目されています。

本記事では、その内容を踏まえながら、これからのエンジニア像や企業の取り組みの在り方について整理します。

日本のソフトウェア産業の現状

報告書では、日本のソフトウェア産業が持つ「品質の高さ」と「運用安定性」を強みとする一方、
スピード・柔軟性・価値創出力 の不足が課題として指摘されています。

多くの企業が依然として受託開発中心のビジネスモデルに依存し、
独自の製品やサービスを通じて価値を創造する「オファリング型」への転換が進んでいない現状があります。

また、上流工程の要件設計や、ビジネスとテクノロジーをつなぐ人材の不足も指摘されており、こうした構造的な課題が日本企業のグローバル競争力を低下させていると分析されています。

オファリング型への転換が意味するもの

報告書が提唱する「オファリング型」とは、単に自社製品を開発することではなく、
社会課題や顧客の潜在ニーズを捉え、テクノロジーを通じて新しい価値を提供する
というアプローチを示します。

これまでのように「依頼に応じて作る」から、
「自ら課題を定義し、最適なソリューションを設計する」へ。

この転換には、ビジネスモデルの見直しだけでなく、
エンジニア自身のマインドセットとスキルの変革が不可欠です。

「価値創造型人材」に求められる能力

報告書では、これからのエンジニア像として
「価値創造型人材」 という概念が示されています。

それは、特定の技術に詳しいだけでなく、
次のような能力を併せ持つ人材を意味します。

  • 課題発見力:曖昧な状況から本質的な問題を見抜く力
  • 設計・提案力:技術を用いて最適な解決策を描く力
  • 共創力:他職種や顧客と協働しながら価値を形にする力
  • 学習継続力:変化する技術環境に自らアップデートし続ける力

AI やクラウドなどの先端技術が一般化した今、
知識の量よりも「問いを立てる力」「技術を価値に変える力」が求められています。

JISA・産業界による具体的な取り組み

報告書では、JISA(情報サービス産業協会)を中心とした実践的な人材育成プログラムが紹介されています。

  • NTC プロジェクト:実際の社会課題を題材に、探索・企画・提案を行う実践型教育
  • IT アスリート研修:テクノロジーを通じた課題解決力を育成
  • JDI Challenge:デジタルイノベーションをテーマにした共創プログラム

これらの活動では、「社外人材との協働」「思考や行動の変化」といった効果が確認されており、
単なるスキル研修を超えた「考え方の転換」を促す仕組みとして機能しています。

また、今後は国家資格制度や専門試験の見直しを通じて、
価値創造力を正当に評価できる仕組みづくりも提言されています。

企業としての示唆

本報告が示す方向性は、単に人材育成の問題にとどまりません。
企業文化、評価制度、プロジェクトの進め方そのものを見直す契機となります。

  • エンジニアが企画段階から関わる仕組みを作る
  • 成果を「工数」ではなく「価値」で評価する
  • 社内外の学びの場を拡充し、挑戦を奨励する

こうした環境づくりが、真に価値を生み出すエンジニアを育てる基盤になるでしょう。

技術が問う「なぜ作るのか」

『日本のソフトウェア産業の未来』は、
単なる産業レポートではなく、**日本のソフトウェア産業全体に対する"行動の呼びかけ"**でもあります。

これからのエンジニアリングは、「作る」ことよりも「価値を生む」ことが中心になります。
企業も個人も、どのように社会に貢献できるかという視点を持つことが一層重要になります。

技術が成熟した今こそ、求められているのは
「何を作るか」ではなく、「なぜ作るのか」
を問い続ける姿勢だと感じます。

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